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結婚披露宴は、形式だけのセレモニーじゃない。 二つの家族で初めての、『食事の時間』。 /三保の松原 栄縁結婚式(後編)

更新日:2018年7月10日



目まぐるしく変化していくこの時代、私たちはそれでも、永遠の愛を誓いたい。夫婦の縁だけでなく、親族や友人も含めた、より多くの豊かな縁が、未来を支えてくれるはず。



そんな想いを持つ二人の、ささやかであたたかな挑戦。



静岡の世界遺産の地、三保の松原で永遠の愛を誓って松を植えた二人は、家族になりたいみんなと、披露宴へ。


 

※三保松原地域活性化プランコンテストで、 「世界遺産、三保の松原を、永遠の愛を誓う聖地に」というアイディアを提案したチームの一員としてこの結婚式を手伝った中川優芽がこの第二部の記事を作成しています。


 

食卓は、家族みんなで囲むもの。



披露宴会場は、三保松原から少し離れた場所にある「ホテルクエスト清水」。



席次表を手に取り、会場のドアを開けると、待っていたのは、披露宴では見慣れない風景。

おっきなテーブルを、 みんなで囲んでる。 おじいちゃんやおばあちゃん、 若い子たちが、入り混じって。



なんだかまるで、大きな家族みたい。



そういえば、 かつての日本の家族は、共食。 いわゆる「同じ釜の飯を食う」ことが自然でした。 同じ時に、同じご飯を食べて、そこに会話がありました。



でも、最近の日本は、核家族化。 地域の縁は弱まり、家族も共働きで、 違う時に違うご飯を黙々と食べています。



家族みんなで食事をし、心を通わせる家庭の食卓は、昔から続く日本の文化。



「人とのつながりを、取り戻したい。」という新郎新婦の想いが、 会場の座席配置や雰囲気づくりに活かされていました。



そんな二人から、 ゲストの皆さんへのウェルカムドリンクにも、 さりげない一工夫が。



新郎新婦それぞれの出身は、日本を代表するお茶の名産地、「静岡」と「京都」。


そんな二人からのウェルカムドリンクでは、 京都にゆかりのある新婦の関係者には、静岡茶が、 静岡にゆかりのある新郎の関係者には、京都茶が、 それぞれ用意されていました。



「あ、いつものお茶とは、少し違うかも…」

「甘くて、やさしい味。」

「ほんとね。でも、これもまた素敵ね。」



普段とは違うお茶の味を楽しみながら、 自分の地元のお茶を飲んでいる人たちの様子を互いに見て ほほ笑み合ってる景色に、思わずほっこり。



そして、新郎新婦からのお礼を込めた挨拶が終わると、 披露宴恒例、「乾杯」の挨拶、のはずが…



また、やられてしまいました。 二人の仲人としてマイクを受け取った住吉昴太さんは、合掌しています。



「それではですね、皆さん…」



「いただきます!」



普通なら「乾杯ー!!」と挨拶をするところですが・・(笑)



一つの大きな家族として、みんなでご飯を食べる雰囲気を大事にしたいと、 手を合わせて真面目に「いただきます」を言う住吉さんを見て、 打合せ済みの新郎新婦も、思わず笑っちゃってます。



そんな住吉さんも、学生時代は新郎と一緒に地域活性化コンテストを立ち上げ、 卒業後もあえて地元の企業に勤めることを決めたほどの、地元想い。



地元だからこその、人とのつながりの豊かさを大事にしたい。 その想いは、彼の挨拶でのあたたかい言葉にあらわれていました。



“ホテルクエストさんの料理のひとつに、

「駿河湾レシピ」というものがございます。



糖尿病の人は食事制限でフルコースを一緒に食べられないことがあります。でも、食卓って本来みんなで囲んでたべるものだよねと。


食卓は誰も仲間はずれにしない場所ではないでしょうか。みんなで食べて喜びを共有するのが、ご飯。


そういった思いで、糖尿病の方でもみんなと一緒に食べられるフルコースを作っているそうです。


まさにその理念のように、ここにいる皆さんが同じ喜びを共有し、家族のような関係になることを願って、新郎新婦はこの場所を選ばせていただいたとのことです。


それでは皆さん、ご一緒に。いただきます。”




「いただきます。」



それは食卓の土壌を耕す、魔法の合言葉でした。食の生産者現場と食卓が遠く離れている現代でいただきますの意味を再考するのはむずかしいのかもしれないけれど



動物や植物の命をいただくことへの感謝と食事に携わった人へのありがとうの気持ちは、どんな時代になっても捨ててはいけない大切な心。



豊かな縁によって守られる古き良き日本の食卓を描いているようでした。



こうして乾杯(?)も無事に終わって、みんなで自由な歓談へ。



とはいっても、 「隣のこの人、どんな人なんだろう…」 「とりあえず、友達とだけ話そうかな…」 「どうしよう、何話したらいいか分からない…」



そんないつものコミュ障を発揮しようとした、その時。



「それでは、新郎新婦より、他己紹介の時間です。」



一人ひとり、来てくれた方々を、 感謝を込めて、丁寧に紹介していきます。



気難しそうに見えたおじさんは、地元想いの誠実な活動家でした。



やんちゃそうに見えた青年は、新郎の、子供の頃からの親友でした。



昔のことを懐かしそうによく話して いたのは、新婦の親戚でした。



すべての人の紹介が終わって ふと見回してみた会場は、見た目はさっきと同じなのに、それぞれの人生を身にまとった、生きている「ひと」にあふれていました。



「静岡が、お好きなんですね。」

「そうだよ。おれのふるさとよ。」



「新郎のお友達だったんですね。」

「あぁ、あいつは昔から変なやつでした(笑)」



「赤ちゃんも普段一緒なんですか?」

「そうそう、一緒に暮らしてるよ。」



はじめて会う人ばかりなのに、 なぜか、なつかしい。ずっと昔、会ったことがあるかのように。



いたるところで、自然と生まれていく会話を通して、初めて出会う人生が、優しく、なめらかに、結ばれ合う。そんな時間でした。



どうしたら、家族になれるんだろう?

それは、一緒の体験を重ねること。


気づいたら、披露宴も、いよいよ終わりへ。少し名残惜しさを感じ始めていた、そのとき。



「皆さん、最後に一つ、やりたいことがあるんです。」

「みんなで、家族になりたいんです。」



血はつながっていなくても、家族のように、深いつながりを感じ合い、支え合える関係、新郎新婦は、それを”拡張家族”と呼びました。



みんなで、”家族”になるために、 大事なことはなんだろう。



二人が出した一つの答えは、 「一緒の体験を、重ねること」。



新郎と新婦、そして新郎の父の3人が、 ゲストの皆さんと家族になるために 一緒にやってみたいテーマをそれぞれ話してくれました。



「非日常な空間の中で”ともに食べる”を楽しむ、キャンプのあり方とは?」 「子育てを、友人たちと一緒にシェアすることって、どうしたらできる?」 「ここ三保の松原に、みんなが毎年訪れたくなる仕掛けとは?」



自分の興味あるお題を選んで、 集まってアイディアを出し合うゲストの皆さん。



「地元のヒロインを発掘して映画つくって、聖地巡礼のPRしたら面白いんじゃないですかね?」 「ほえぇ、今はそんなのがあるんかいな…!でも、なぁんにもないまち、静かなまち、ってのも素敵なもんやで。」 「あぁ、確かに…!都会は騒がしくて、疲れてる友達も多いです…!」 世代を超えて、みんな夢中になってアイディアを出し合ってる。



「シェアハウスでの子育てってやっぱり難しいのかな。」 「やっぱり最後は無条件の愛じゃないかな。俺の母さんはさいつも信じてくれてて・・・-やべ、涙でそうだからここまでにしとく。」 「食は大事だよね。偏食の子ども増えてるみたい。」



今日初めて会った人たちとは思えないあったかい言葉が交わり、重なってゆく。



いつのまにか考える時間は過ぎ去って、 発表の段になっても、



不思議な高揚感と一体感に包まれていました。



栄えある縁が、永遠をつくる


こうして、 奇妙だけど、なぜかなつかしく、あたたかい、 そんな披露宴は、ゆっくり幕を閉じていきました。





結婚しなくても幸せになれる、この時代に、 「結婚」するって、どういうことなんだろう。 変化が激しく未来が見えない、この時代に、 「永遠」を約束するって、できるんだろうか。



むずかしい。



でも、 今回の結婚式を通して、わかったこと。 結婚は、二人だけのことじゃない。永遠は、二人だけで担わなくていい。



新郎と新婦をとりまく、 豊かな人間関係が、 栄えあるご縁の数々が、 互いに結ばれ合って永遠をつくってくれる。



それは、未来が見えないこの時代に、 確かな安心とつながりをもたらしてくれるものでした。





だいじょうぶだよ。 あなたは、たくさんのご縁に、 守られてるからね。




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